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 自分のために、祖父が脅されている。

 よく考えれば、その事実に気づけただろう。組織にいた間だって、「組織がどんな類の情報を収集しているのか」が隠されていたわけではない。基本的に得た情報は誰しもが知ることが出来るようになっていた。その中でここ数年、静貴や祖父の名がよく見られるようになっていたのだから、疑うことくらいは出来たはずだ。それが、栞那はただ単に裏につながりのある人々だからだ片付けていた。

 静貴たちはともかくとして、祖父の家―遠藤家―は昔から協力を仰ぐことの多かった家のはず。それがある日を境に急に、“探られる側”になるなど考えにくいのに。

(確か、5年前くらいだったはず……その頃からあの人は、おじい様を脅していた? でも、脅していたならなぜ探ったりなんてするというの)

 その間にどれほどの情報を集めていたのだろう。栞那の祖父を脅して何かをさせていたのだとすれば、監視のために情報を集めていたのかもしれない。

「君は母親の話を、遠藤氏から聞いたことは?」

 ふと顔を上げると、隣に座っていた静貴が、そう栞那に問いかけた。

 栞那は思い返したが、少ない時間の中で彼と話したことは少ない。母親の話は後日という話だったはずだ。

「お母様の話? そういえば、落ち着いたときに話すって……」

 思い出したことを告げると、静貴は少し落胆した様子だった。母親のことが重要なのだろうか。

「そうか、聞いていないのか」

「お母様がどうかしたの?」

「いいや。たいしたことではないんだ。それより今は、もう二度と猫が忍び入れないように対策を練らなくてはね。合法的に且つ目立たぬように彼らを追い払う方法はないものか……」

 追い払う手段。それなら、きっと確かな方法はひとつだろうと。

 それは何より彼が求めている栞那が説得すること。そして、怪しまれずに説得する為には―――。

「……ひとつあるよ」

「え?」

「そのためには、皆さんに一仕事してもらう必要があるけど……。どうする?」

 怪しまれずに説得する為には、連絡手段を手に入れなければならない。

 こればかりは、誰かの協力が不可欠だ。

 栞那がちょっと困ったように笑っていると、静貴は眉を潜めている。「君に任せよう」という言葉とは裏腹に、少し心配そうな表情をしている彼を尻目に、栞那は準備に取り掛かった。そして一枚のメモを彼に手渡す。

 その内容を見て彼は、少し気の毒そうな顔をしていたが、やがて栞那が諦めないと悟ったのか、マックスを連れて退室して行った。

 珍しいことに、遊んでもらえると思ったのだろうか、マックスは文句も言わずに彼について行き、部屋は静かさを取り戻すこととなった。

2015-05-05

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