Episode.2 結界主の謎(3)

「集会? 確か規則では、勝手に結界主同士が集まることがあってってはならない、となっていたはずですが」

 エルナは頭の中で規則を思い出す。細かな規則の中でも、不要と思われる規則の一つ。それが集会の禁止。これは結界主に限らず、国民全体に言えることである。勝手に集会を開けば罰が下り、普通の生活には戻れないという。その罰の内容は公開されていない為、国民は集会を開けずにいるという話は、クルトから何度も聞いていた。

「私もそうお返事したのですが、上から許可が下りたそうで、勝手ではないそうです。先日のこちらの騒ぎに乗じて、対策を考える名目で集会の予定を組んだようですね」

「上は気づかなかったのですか」

「気づいたでしょうが、反論もできないでしょう。いつだって被害を被るのは現場ですから、その現場に必要だといわれたら、何も言えないものなのですよ。表向きは」

 外交などの都合もあるのだろう。正当な理由を述べられれば、許可を出さないわけには行かない。話し合いが必要だと現場が判断した以上、それを拒否することはできない。おそらく、結果の報告は義務なのだろうが。

「ところで、いつ集まるのですか?」

「今回はここに近い場所の方が2人、いらっしゃるだけです。このブレード地区の西側のキルア地区と、東側のレスフレイ地区の結界主の方です」

 グラフィー国では、国都と呼ばれる国の中心地は、国の中央にある。それを囲むように、各地区が存在する。一番北が、エルナが結界主を務めているブレード地区。その西南がキルア地区、南東がレスフレイ地区であり、南側にも西南に別れて2つの地区が存在する。南側の地区のうち、西側を西ネイシア地区といい、東側を東ネイシア地区という。

 グラフィー国は、国都とこの5つの地区で形成されていて、国都から離れるほどに経済状況は悪くなっていく。

 主に結界主がいるのは、その地区の中央辺り。どの地区の結界主も、国都への距離は同じくらいになるように、屋敷の場所は工夫されている。

「お隣の……。拝見する限り、とても大人しそうな方々でした」

「西ネイシア地区の結界主と中のよいお二人ですから、見た目はお淑やかでも、とても行動力がおありなのでしょう。西ネイシア地区の結界主の方といえば、あなたと並んで、上に逆らう方として有名ですからね」

 そういえばエルナが会議で注意を受けるときは、決まって彼女も注意を受けていた。その彼女と関わりの深い二人なら、行動力があるのも頷ける。

(何か、色々と変わっていく気がする)

 今は朝である。二人がこの部屋へ着くのは昼頃になるだろう、と思いながら、エルナは踊る心を隠さずに、手元の作業を手早く進めていた。